悠々日記〜7人家族その日暮らし〜

5人の子育てに奮闘しながら悠々自適に暮らしているベンチャー社長の奮闘物語をゆるく発信します。

「役に立つ」か「意味がある」もの

少し前に秀逸な記事を読んだので忘れない様にメモしておく。この山口周さんの分析、解説は非常に分かり易い。ものをつくる、売る、伝える人にとって知っておかなければならないロジックだと思う。

GAFAのなかで、Appleだけが「意味」の世界で闘っている グローバル競争で生き残るのに必要な、たったひとつの考え方 - ログミーBiz

世の中で売れているモノっていうには必ず、「役に立つ」っていうベネフィットか、「意味がある」っていうベネフィット、どちらかがあります。「役にも立たないし意味もない」っていう商品は、世の中に存在できません。

自動車産業を当てはめてみるとけっこうわかりやすいです。日本車のほとんどって、「役に立つけど意味がない」んですね。移動手段として快適で、燃費が良くて安全に移動できますよっていう、役に立つ手段として買われてます。家族みんなで移動するときにはやっぱり公共交通機関より車のほうがいいよね、っていうことで買われてるんですけども。

アルファードじゃないと俺の人生じゃない」とかですね、「アコードに乗れない人生なんて有り得ない」とか、そうやって買う人ってあんまりいないと思うんですね。日本車でも例えばNSXとか、昔のスカイラインとかね、本当にそういうの好きで乗ってる人いると思いますけども。99パーセントの人はふつうに移動手段として役に立つから買ってる、っていうぐらいのもんだと思います。

 

値段が10倍だからといって、機能も10倍になるわけではない
もちろん移動手段として買ってるっていう側面が強いんですけれども、役に立つだけだったら日本車買えばいいじゃないかって言うと、「いやいや、やっぱり俺はBMWが好きなんだ」とか「やっぱりポルシェが好きなんだよね」っていう人はいるわけです。

これ、値段でいうとプラスアルファで400~500万から1000万ぐらい払うことになって、値段としては3倍、4倍するわけですね。じゃあ3倍、4倍役に立つんですかとそうではない。「うちのアルファードは7人乗れるんですけれども、それだけ出したら20人ぐらい乗れるんですか?」「いや乗れません、5人ですよ」と。「じゃあ燃費がリッターで15キロぐらい走るんですけれども、60キロぐらい走るんですか?」「いや、あまり燃費変わらないですね」と。

機能は変わらないんですよ。安全性も変わらない。でも値段は3倍~4倍します。じゃあ何にそのお金払ってるんですかっていうと、意味を買ってるんですね。その人にとってのなんらかの情緒的な意味を買ってるわけです。意味に500万とか600万とか乗っけて買ってるわけです。

さらに言うとですね、役に立たない自動車ってあるんです、おそるべきことに。役に立たない、意味しかないっていう自動車があります。「ドアが上に開くのになんか意味があるんですか?」って言うと、意味があるんですね、あると思う人にとっては。

これ、3,000万とか5,000万とかします。値段は10倍です。10倍~20倍ぐらいします。「じゃあ10倍人運べるんですか?」っていうと「いや運べません、むしろ二人しか乗れません」と。「荷物はどうなんですか」、「ほとんど荷物積めません」。「じゃあいろいろなところ走れて役に立つんですか?」「いや、車高が低いんで悪路走らないでください」と。「雨が降ったら危ないんで走らないでください」と、こんな感じで。

(会場笑)

「じゃあ何に使うんですか」って言うと「銀座の大通り、爆音出して突進するんですよ」と。みんな見ますよ、っていう(笑)。それで「よし買った」ってみんな買うわけですね。で、値段は3,000万から5,000万円。

「役に立つ」ことの価値はなくなりはじめている
おそらく過去10年の間で、特殊な自動車じゃなくて、いわゆる自動車メーカーが「新車」として生産した車で一番高額な車っていうのは、Jaguarが販売した1960年型のJAGUAR E typeのレプリカだと思います。ル・マンで優勝した車を20台だけ限定生産したんですね。その20台だけ限定生産したものの、新車の定価が2億円です。で、即日完売ですね、当然。

これは何を言ってるかっていうと、「役に立たないけど意味がある」っていう自動車は2億円で売れるんです。で、「役に立つ自動車」っていうのはせいぜい100万円から300万円でしか売れないっていうこと。何を言ってるかっていうと、「役に立つ」っていうことに価値がもうない時代になってるんです。

ここが非常に難しいところで、私はビジネススクールとか企業の研修でよくこのお題を出すんですけれども。「グローバル企業になるぞ」っていろいろな会社が掛け声を上げてますよね、今。グローバル化グローバル化、って。

グローバル化、みなさんの夢ですね、いいですね、と。「じゃあ日本企業でグローバル化に成功した会社ってどこだと思いますか? 挙げてください、イメージで」って言うと、いろいろ出てくるんです。キヤノンだ日産だ、トヨタだホンダだパナソニックコマツだ、とかいろいろ出てくるんですけど。

20社ぐらい出た段階で、「はい、もういいです、打ち止めです。じゃあこの役に立つ・立たない、意味がある・ないっていう市場で、どこの市場で戦ってる会社かっていうのでプロットしてください」って言うと、ほとんどが「役に立つけど意味がない」っていう市場に入ります。

まぁいいじゃない、と。役に立って、それで戦ってちゃんと市場で勝ち残ってるんだからそれでいいじゃないですか、っていう話もあるんですけれども、ちょっと待ってくださいよと。そこで考えなくちゃいけないのが、「どちらのほうが強豪として生き残れるか、サスティナブルか」っていうことなんですね。

 

動かすのにコストのかからないサービスは、あっという間にグローバル化する
みなさんも直感的に違和感を感じるのは、「役に立つ」と「意味がある」っていう峻別を頭の中でやって、「役に立つものは1個でいいけど意味があるものは多様化するよな」って思ってるんです。

その典型例がGAFAですよ。GAFAっていうのは、世界中を支配するって言われてますけど、なんでそう言われるかっていうと「役に立つから」なんですよ。Googleって検索エンジンですよね。で、検索エンジンに意味ってないんですよ。役に立つ検索結果を返してくれればいいんですね。

例えばGoogleじゃなくて、Googleの競合でPoopleっていうのがあって、たまにすげぇ変な検索結果返してくるけど味があんだよね、とか。そういうのは必要ないわけですね(笑)。

(会場笑)

いらねぇよそんな検索サービス、って。Googleだけでいいじゃん、と。今、日本ではヤフーがちょっとがんばってるので、Googleのシェアそんなに高くないですけど。G7のGoogleのシェアの平均って90パーセント超えてますからね。なんでこういうことが起こるかっていうと、「役に立つけど意味がない」っていう市場において、かつ「動かすのにコストのかからない」サービスは、あっという間にグローバル化します。

動かすのにコストがかからないっていうのは、つまりどういうことかっていうと、ガラスを考えてもらえばわかりやすいんですけど。ガラスってもちろん役に立つんで売れてるわけですね。B2Bの素材ですけども。

役に立つんですけど、ガラスってけっこう「かさ」があるんですよ、値段のわりに。だから運ぶとものすごいコストがかかる。だからあんまり遠くに運ぶよりかは、ローカルで作ったほうが効率がいいってことになるので、ある程度役に立つけど意味がない……ガラスにあんまり意味はないわけですね。本当もう、ガラスとして性能が良ければどこでもいいよ、ということなんですけれども。

 

GAFAの内、Appleだけが「意味」の世界で闘っている
PilkingtonとかCorningとか、そういう会社はアメリカでグローバルに何社かで棲み分けてます。ああいうかたちで何社か棲み分けるのはなぜかというと、移動にコストがかかるからなんですね。移動にコストがかかると、グローバル化のスピードはゆっくりになります。

で、一番体積がちっちゃいのが何かっていったら、電子ですよ。一番ちっちゃいわけです。Googleっていうのは電子を売ってるわけですから。ITのサービスですからね。電子は一番体積あたりのコストがたぶん低いので、「役に立つ」っていう市場では1社だけになっちゃう。

ですからGoogleAmazonFacebookっていうのは、「役に立つけど意味がない」っていう市場で、しかも電子を売り物にしてるので、世界的にシェアがある。ミクシィが負けてしまったのは当たり前のことですよね。その「役に立つけど意味がない」って市場で戦ってるわけですから。

唯一の例外はAppleで、あれはやっぱり買う人にとっては、なんらかの意味を持って買ってるケースが多いと思います。ですからGAFAの中で唯一の仲間はずれはAppleで、役に立ってしかも意味があるっていうところで買われてるのに対して、残りのGoogleFacebookAmazonというのは、役に立つというところで生きてるということですね。

これつまり何を言ってるかというと、市場がグローバル化していくと、役に立つっていう市場で戦ってる企業はグローバル競争にさらされて、一番役に立つ1社だけが残ってほかが全部負ける、っていう世界がやってきます。

日本の企業の多くが「役に立つけど意味がない」市場で戦ってるっていうことは、遅かれ早かれそのグローバル競争の中に巻き込まれていって、多くの企業は勝者として生き残るか、そこから敗退するかっていう、「グローバル役に立つ競争のハルマゲドン」を迎えてですね。あとは最後の1社が生き残るだけ、っていうことになります。

日本の家電業界が凋落していった理由
すでにその兆候は見えていて、例えば日本のお家芸である家電産業っていうのは、20年前までは就職すると親が喜ぶ会社の代表だったわけですね。「三洋電機に内定もらったの? よかったわね、一生安泰だわあなたは!」とかって、みんなで打ち上げやりましょうってお母さんが喜んでくれたわけです。

それがどんどん業績悪くなってますよね。三洋電機は事実上なくなりました。シャープももう事実上潰れました。20年前だったら就職の勝ち組だって言われた会社が、です。

なんでそういうことが起こってるのかっていうと、日本の家電産業のほとんどは「役に立つけど意味がない」というところで戦っているから。市場が閉じた状態であれば各国別に10社ぐらいは生き残れたかもわからないですけども、これがグローバル競争になっていくと、世界で一番役に立つ会社の10社しか生き残れない。

つまり、日本のペナントレースからグローバルのワールドシリーズに戦いが変わることで、日本では10社生き残れたかもわからないけども、グローバル競争になると各国別に2社しか生き残れませんってなると、じゃあ5位から10位の会社は市場から退場してください、3位から5位の会社は市場から退場してください……っていうのが徐々に起こる話になってきていて。

その過程の中で市場からこぼれ落ちていったのが三洋でありシャープだと考えれば、非常にわかりやすいと思います。

この「意味がある」っていう方向に市場をずらしていくのが、大きな組織にとってのテーマになります。

 

一部省略したが、殆ど全文を引用した。

例えが分かりやすくて、省く箇所が殆どなかった。

このGAFAの中でAppleだけが「役に立って」「意味がある」世界で戦っているという分析、面白い。ハードとソフトという点でもAppleだけがハードの世界で戦い続け、ソフトの世界でも革新的なサービスを展開している。

それはituneを基軸にしたMacユーザーに対する顧客満足度を上げるサービスだ。

全てはハードを購入したユーザーの為のソフトツールといえる。

そして、ハードの世界で「意味のある」価値を生み出すのは、デザイン力に他ならない。

 

因みにGAFAの共通点はというと、グローバル戦略と新規性(先駆者)だろうか。

俺が今開発しているプロダクトは「役に立つ」家電というハードの世界なので、すぐにコモディティ化されてしまう競争社会で生き残りをかけて勝負しなければならない。

その上で必要なのは「意味のある」商品にする為のデザイン力とブランディングなのだと理解できた。グローバル戦略と新規性はあるはず。

ベンチャー企業がメーカーを立ち上げて、商品開発し、販売する。

そんな誰もが無謀だと思う様な夢を追いかけて走っていられるのは偉大な先人のおかげかもしれない。

尊敬するスティーブ・ジョブズは、自身がプログラマーでもなければデザイナーでもなかった。もう1人の天才プログラマースティーブ・ウォズニアックが開発した技術を見出した先見性とあらゆる技術を組み合わせる嗅覚と才能を持ち合わせていたのだと思う。

正気の沙汰じゃ大きな夢は追いかけられないのかもしれない。

 

〜悠々自適に生きる〜